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世田谷リハビリテーション病院 > リハビリテーションコラム > 【第24回】痛みと運動の関係

リハビリテーションコラム

2025.09.09

【第24回】痛みと運動の関係

痛みがあるけど運動は続けて大丈夫?

「まだ痛いのに、動かして大丈夫ですか?」
これは、リハビリを受ける患者さんからよく聞かれる声です。
痛みがあると動かすのが怖くなったり、「このまま悪化しないか」と不安に感じたりするかと思います。
今回はそんな不安に寄り添いながら、「痛みと上手に付き合いながら進める運動」についてご紹介します。

痛みの種類と対応方法

私たちの身体が感じる『痛み』には、いくつかの種類があります。痛みのタイプを知ることで、適切な対処や運動の進め方がわかりやすくなります。

①時間的な分類

【急性疼痛】
怪我や手術の後などに感じる一時的な痛みです。身体を守るための大切なサインで、安静や冷やすことなどが大切な場合もあります。

【慢性疼痛】
治療に要すると期待される期間を超えて持続する痛みのことです。治療に要する期間として現在は3か月以上続く痛みとされています。動かさないことで更に悪化することもあり、軽い運動が役立つことがあります。

②疼痛メカニズム的な分類

【侵害受容性疼痛】
骨折や火傷、変形性関節症、関節リウマチなど、体の組織が損傷された際に感じる痛みです。傷や炎症からその部位に痛みを感じるものになります。

【神経障害性疼痛】
脳卒中や脊椎疾患、糖尿病、帯状疱疹、化学療法などで神経が傷ついた際に感じる痛みです。日常動作や姿勢に注意が必要なこともあります。

【痛覚変調性疼痛】
検査をしてもはっきりした原因が見つからないのに、痛みが続くものです。線維筋痛症などの病気やストレス・疲れなどが影響している場合もあります。身体と心の両方からのケアが大切です。

分類名 特徴 対応方法
急性疼痛 組織の損傷による一時的な痛み 骨折、捻挫、
手術後など
安静や物理療法などの
炎症コントロール
慢性疼痛 3ヶ月以上続く痛み 慢性腰痛、
肩こりなど
運動療法や物理療法
+心理支援、認知行動療法
侵害受容性疼痛 傷や炎症などの刺激による痛み 外傷、関節炎、
変形性関節症など
原因除去や薬物療
+段階的運動療法
神経障害性疼痛 神経の障害による異常な痛み 脳卒中、脊椎疾患、
糖尿病など
薬物療法や心理的教育
+運動療法や動作指導
痛覚変調性疼痛 明らかな原因がなく痛みが続く 線維筋痛症、
慢性広範囲痛など
薬物療法や心理的教育
+運動療法や物理療法

痛みがあっても動かしたほうがいい?

「痛み=動かしてはいけない」と感じる方は多いですが、全ての痛みが“動かすべきではない”というわけではありません。
例えば、関節のこわばりや使わなかったことで硬くなった筋肉の痛みは、少しずつ動かすことで改善することがあります。
ただし、以下のような痛みには注意が必要です。
  • ・鋭く刺すような強い痛み
  • ・熱を持って腫れている場合
  • ・じっとしていても強く痛む
リハビリテーション医療では、医師やリハビリセラピストがそうした痛みの違いを見極め看護師や薬剤師なども交え多職種で情報共有し相談しながら「動かしても大丈夫な範囲」を判断して進めています。遠慮せずにどんな痛みかを伝えてください。

痛みがあっても、できることはあります

「痛みがあるうちは、何もできない」と思ってしまいがちですが、“痛みゼロ”でなくても、出来る運動はたくさんあります。
例えば
  • ・関節の角度を調整して動かす
  • ・軽めの動作を中心に行う
  • ・出来る範囲で生活動作を練習する
  • ・痛みの出ない・出にくい動きを探す・練習する
といった運動療法や認知行動療法などのリハビリを行い、小さな工夫を重ねながら、「今できること」を少しずつ広げていくことが、痛みの軽減や体の回復にも繋がります。
【参考・引用文献】
1)厚生労働省:慢性の痛み診療ガイドライン,2021.Retrieved from 厚生労働省公式サイト
2)日本ペインクリニック学会:痛みの機序と分類.Retrieved from 日本ペインクリニック学会公式サイト
3)森脇克行・大下恭子・堤保夫:ICD-11時代のペインクリニック-国際疼痛学会(IASP)慢性疼痛分類に学ぶ.日本ペインクリニック学会誌.2021,28巻6号,p91-99.
4)猪狩裕紀・牛田享宏:慢性疼痛のメカニズムとアセスメント.The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine.2021,58巻11号,p1216-1220.
5)川村博文・西上智彦・伊藤健一・大矢暢久・辻下守弘:疼痛に対する物理療法・運動療法,The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine.2016,53巻8号,p604-609.